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地盤改良は実際には目に見えない基礎にかかわる工事のため、それにかかる費用はなかなか納得しにくいものです。
提示された設計内容や費用が妥当なのか、納得するためには地盤改良工事にはどんな種類があるのかを知ることが大切です。
今回は、地盤改良工事を行うメリットと、工事の種類、費用相場、注意点をご紹介します。
地盤改良とは、基礎となる地盤を頑丈な地盤にする工事です。
建物の基礎には直接基礎と杭基礎の2種類があります。
直接基礎というのは、強い地盤の上に基礎を直接作り、建物の荷重を地盤に広く分散させる形式の基礎のことです。
強い地盤がある土地や、木造の戸建て住宅などの重量が軽い建物の場合に用いられます。
杭基礎は、杭を使って建物を深い位置の強い地盤で支える形式の基礎のことです。
強い地盤までの距離が長い場合や、賃貸マンションなどの大きい物件の場合に多く用いられています。
地盤改良工事は、直接基礎ができない場合において行うため、木造の戸建て住宅などの重量が軽い建物を建てる場合に用いられます。
地盤改良工事には一般的に使われるものとして「表層混合処理工法」、「深層混合処理工法」、「鋼管杭工法」、以上の3種類があります。
表層混合処理工法とは、地表から強い地盤までの距離が2m程度の場合に可能な工事で、弱い地盤の表面を約2m掘削し、セメント系凝固剤を投入した土を戻す工法です。
地盤を直接頑丈にするという点から、言葉のイメージに近い工法かもしれません。
深層混合処理工法とは、地表から強い地盤までの距離が2〜8m程度の場合に使われる工事です。
地面に柱状の穴を空け、セメント系凝固剤を地盤に流し込みながら、強い地盤まで強固な杭を作ります。
住宅を建てる際の地盤改良工事として多く用いられている工法です。
鋼管杭工法とは、地表から強い地盤までの距離が5〜10m程度の場合に使われる工事です。
小口径鋼管の杭を強い地盤まで打ち、土台を作ります。
地盤改良工事を3つご紹介しましたが、次はそれぞれのメリットと注意点について解説します。
表層混合処理工法のメリットは以下のとおりです。
・工期が1日から2日程度と短期間
・改良する表層が浅い場合にはリーズナブル
・小型重機でも施工ができる
・地中に石やコンクリートが混入していても施工できる
・適用できる土質が粘性土、砂質土、酸性土、腐植土など多様
・六価クロム低減セメント系凝固剤を用いることで、六価クロムの低減が可能
特に工期が他の工法よりも短期間である点と、コストが安く抑えられる場合が多い点は大きなメリットといえます。
注意点は以下のとおりです。
・勾配が急な土地では施工が難しくなる
・仕上がりの強度が施工業者のスキルに依存する
・軟弱層の厚さが2m以下の浅い場合のみ施工可能
よって、表層混合処理工法は勾配が緩やかな土地には向いています。
深層混合処理工法のメリットは以下のとおりです。
・シンプルな工法で比較的リーズナブル
・工期が2日から3日程度の短期間で行える
・弱い地盤の下に強い地盤がなくても施工が行える
この工法はコストが安く抑えられる点と、基礎の下に強い地盤がなくても施工できる点が大きなメリットといえます。
注意点は以下のとおりです。
・有機質土など特定の地盤では、セメントが固まらないという固化不良が生じる可能性がある
・沈下事故発生率が高い
・施工後に地盤を元の状態に戻すのが難しいため、土地の売買価格が低下する可能性がある
・杭の撤去にコストがかなりかかる
・高低差のある土地や狭い土地では重機が搬入できない場合がある
これらのことから、不同沈下の可能性がある土地、弱い地盤の土地に向いていて、将来的に売却の予定がない場合であればおすすめです。
鋼管杭工法のメリットは以下のとおりです。
・地盤強度が他の工法よりも高い
・3階建てなどの重い建物でも施工できる
・セメントを使用しないので六価クロムの発生を防止できる
・産業廃棄物が発生しない
特に小型の重機で工事が可能である点が大きなメリットです。
注意点は以下のとおりです。
・強い地盤がなければ施工できない
・工事中に大きな騒音や振動が発生する
・他の工事とくらべて高額になる傾向がある
このように、鋼管杭工法はほか2つの表層混合処理工法、深層混合処理工法では対応できず、強い地盤がある土地に向いています。
それぞれの工事の費用相場は以下の通りです。
・表層混合処理工法の場合、1坪あたりの費用相場は2〜3万円
・深層混合処理工法の場合、1坪あたりの費用相場は3〜5万円
・鋼管杭工法の場合、1坪あたりの費用相場は5〜7万円
3つの工法の中では表層混合処理工法が最もリーズナブルです。
今回は地盤改良工事の種類と、3つの工法のメリット、デメリット、費用相場についてご紹介しました。
工法にはそれぞれ向いている土地、施工期間、施工後の地盤強度などメリット、デメリットがあります。
それらを総合的に考えた上で、どの工法を行うのか決めることが大切です。